seven wonder!
ユミの家は、学校から電車で二駅のところにある。
駅前のメインストリートを抜けて10分ほど歩いたところにそびえ立つ、結構大きな一軒家だ。
チャイムを押すと、いつも笑顔でとっても優しいユミのママが出てきた。
「まあ、リカちゃん、いらっしゃい。あら?」
ユミのママは、先輩のほうをみて首を傾げる。
「あ、こちら門脇先輩です。あの、ユミのことが心配だっていうので、一緒に」
「始めまして」
先輩は、見事な社交スマイルを浮かべた。
「まあまあ、ありがとう。どうぞ、あがってあがって」
靴を脱いでスリッパへと履きかえると、
「いまね、アイコちゃんとユウキちゃんも来てるのよ」
「あ、ほんとですか」
ふたりもまだ、帰っていなかったらしい。
「ユミちゃんの具合、どうなんですか」
先輩が隣から、ユミのママに尋ねた。
「単なる風邪みたいなんだけど、熱が下がらないのねえ。昨日病院を変えたから……。新しいお薬が効くといいんだけど」
うつるとまずいからあまり近付いちゃ駄目よ!というユミのママにお礼を言って、ふたりで二階へと上がる。
突き当たりにある、ユミの部屋の扉を開けた。
すると、深刻そうな顔で話をしている最中だったベッドの上のユミと絨毯の上のアイコとユウキが一斉にこちらを向く。
そして、
「うわぁリカちゃん!わざわざごめんねー!」
「白状したわよ!こいつ!やっぱ見たんだって!」
「あ!門脇先輩ですか!?あの、私、吹奏楽で高木先輩と仲良くさせてもらってて、門脇先輩の噂はかねてより……」
三人同時に捲くし立て始めた。
先輩と顔を見合わせた私は、
「と、とりあえずちょっと、落ち着いて……」
まずは先輩の紹介をすませると、アイコたちと同じように絨毯の上に座り込む。
「で、見たっていうのは何をみたの?」
私が聞くと、ユミ下を向いてしまった。
「………そのぉ」
「幽霊だよね!」
「うちの学校の生徒だったんだって!」
喋りたくてしょうがないといった感じのふたりとは違って、ユミの口は重く、中々続きを話さない。
「だって怖いんだもん。下手に話して、呪われたくないし」
それを聞いて、門脇先輩は諭すように言った。
「みたところ、あなたが霊にとり憑かれてるってことはないわ」
「え、ほんとですか?」
ユミは気味悪そうに背後を振り返る。
「うん、だから安心して。悪い霊に憑かれているんだったら、すぐにわかるもの」
先輩の言葉に、ユウキが疑惑の眼差しを、アイコが畏怖の眼差しを向けたのが、私にはわかった。
「うちの生徒だったっていうのは、霊自身の言葉?」
「まさか!喋ったりはしてません!ただ、うちの制服来てたから」
「顔は?見覚えあった?」
私が聞くと、ユミはまた口をつぐんでしまった。
「私たちにも教えてくんないのよ。でも、話せないってことは知ってる顔ってことだよねえ」
アイコが言うと、喋っちゃいなよ、とユウキが促す。
私は妙に嫌な予感がして、聞いてみた。
「まさか……この中の誰かがとか言わないわよね」
「いやあぁ!やめてよっ!」
「ド、ドッペルゲンガーってやつ!?」
「やだ……怖すぎる」
「それか、実は制服を着た髭面の男だったとか?」
「げ、それはそれできもちわるい……」
騒ぎ立てる私たちの中でひとり冷静な先輩が、
「どうだったの?」
静かにそう尋ねると、ユミは震える声で答えた。
「……顔は……顔は、見てません。だって────」
ユミは青ざめた顔で、瞳を潤ませながら言った。
「頭が、無かったんです」
駅前のメインストリートを抜けて10分ほど歩いたところにそびえ立つ、結構大きな一軒家だ。
チャイムを押すと、いつも笑顔でとっても優しいユミのママが出てきた。
「まあ、リカちゃん、いらっしゃい。あら?」
ユミのママは、先輩のほうをみて首を傾げる。
「あ、こちら門脇先輩です。あの、ユミのことが心配だっていうので、一緒に」
「始めまして」
先輩は、見事な社交スマイルを浮かべた。
「まあまあ、ありがとう。どうぞ、あがってあがって」
靴を脱いでスリッパへと履きかえると、
「いまね、アイコちゃんとユウキちゃんも来てるのよ」
「あ、ほんとですか」
ふたりもまだ、帰っていなかったらしい。
「ユミちゃんの具合、どうなんですか」
先輩が隣から、ユミのママに尋ねた。
「単なる風邪みたいなんだけど、熱が下がらないのねえ。昨日病院を変えたから……。新しいお薬が効くといいんだけど」
うつるとまずいからあまり近付いちゃ駄目よ!というユミのママにお礼を言って、ふたりで二階へと上がる。
突き当たりにある、ユミの部屋の扉を開けた。
すると、深刻そうな顔で話をしている最中だったベッドの上のユミと絨毯の上のアイコとユウキが一斉にこちらを向く。
そして、
「うわぁリカちゃん!わざわざごめんねー!」
「白状したわよ!こいつ!やっぱ見たんだって!」
「あ!門脇先輩ですか!?あの、私、吹奏楽で高木先輩と仲良くさせてもらってて、門脇先輩の噂はかねてより……」
三人同時に捲くし立て始めた。
先輩と顔を見合わせた私は、
「と、とりあえずちょっと、落ち着いて……」
まずは先輩の紹介をすませると、アイコたちと同じように絨毯の上に座り込む。
「で、見たっていうのは何をみたの?」
私が聞くと、ユミ下を向いてしまった。
「………そのぉ」
「幽霊だよね!」
「うちの学校の生徒だったんだって!」
喋りたくてしょうがないといった感じのふたりとは違って、ユミの口は重く、中々続きを話さない。
「だって怖いんだもん。下手に話して、呪われたくないし」
それを聞いて、門脇先輩は諭すように言った。
「みたところ、あなたが霊にとり憑かれてるってことはないわ」
「え、ほんとですか?」
ユミは気味悪そうに背後を振り返る。
「うん、だから安心して。悪い霊に憑かれているんだったら、すぐにわかるもの」
先輩の言葉に、ユウキが疑惑の眼差しを、アイコが畏怖の眼差しを向けたのが、私にはわかった。
「うちの生徒だったっていうのは、霊自身の言葉?」
「まさか!喋ったりはしてません!ただ、うちの制服来てたから」
「顔は?見覚えあった?」
私が聞くと、ユミはまた口をつぐんでしまった。
「私たちにも教えてくんないのよ。でも、話せないってことは知ってる顔ってことだよねえ」
アイコが言うと、喋っちゃいなよ、とユウキが促す。
私は妙に嫌な予感がして、聞いてみた。
「まさか……この中の誰かがとか言わないわよね」
「いやあぁ!やめてよっ!」
「ド、ドッペルゲンガーってやつ!?」
「やだ……怖すぎる」
「それか、実は制服を着た髭面の男だったとか?」
「げ、それはそれできもちわるい……」
騒ぎ立てる私たちの中でひとり冷静な先輩が、
「どうだったの?」
静かにそう尋ねると、ユミは震える声で答えた。
「……顔は……顔は、見てません。だって────」
ユミは青ざめた顔で、瞳を潤ませながら言った。
「頭が、無かったんです」
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