seven wonder!
あの夜、4人で組んでいるガールズバンドの練習ですっかり遅くなった私たちは、クラブ棟から正門までの最短距離であるあの古い礼拝堂の横の道を、迷わず選んで歩いていた。
もし一人だったら、大きな銀杏の木に月明かりまで遮られて真っ暗になってしまうあの道を、選んで歩いたりはしなかったと思う。
でも、あの時はいつものメンバーでいた訳だし、怖いなどとは微塵も思わなかった。
例によってユミとユウキが馬鹿なことをいい、アイコがそれに突っ込んでいる横で、ふとあの礼拝堂に視線を向けた私は、窓からこちらを見ている白い服を着た女性を見ても、不思議にすら感じなかったのだ。
「あれ……?」
「ん、どしたー」
「あそこ……礼拝堂に誰かいるみたい」
「それはないでしょ。立ち入り禁止だよ、あそこ」
ユミは私が指さす方向に眼を凝らしながら言う。
「でも、確かに女の人が……」
私がそう言った後で、あれ……もしや……という雰囲気が4人の間に漂った。
「ひょっとして、この世のものじゃないモノですか?」
「もー、そういうの、冗談でもやめてー」
顔を顰めるアイコの隣で、
「ねえ!ちょっと見て来ようよ!」
ユミは瞳を輝かせながらユウキの腕を引っ張っている。
「だから、あそこは立ち入り禁止でしょ!ばれたらヤバいって」
その礼拝堂は、もうずいぶん前に今の新しい礼拝堂が完成して以来、長らく使われていない場所だった。
それでも取り壊しの話が出ないのは、ものすごく古い建物で、歴史的価値があるとかないとか、とにかく手入れだけは時々されながらも、ずっと放置されたままの状態で、もう何年もそこにあるものだったのだ。
当然、中で生徒がたむろしたりしないように、立ち入り禁止となっている。
更に言えば、曰くつきの噂も色々あった。
幼い子供の笑い声が聞こえてくるだとか、死んだ女生徒の霊が出るだとか。
「私、ちょっと行って来るよ」
そんな噂を知ってか知らずか、ユミは腕まくりのポーズをしながら、カバンをユウキに渡している。
「ええ!やめときなよ!」
「そうだよ。もしかしたら痴漢とかかもしんないし。危ないよ」
「いいの!一度でいいから見てみたいんだ、幽霊」
ユミは、言い出すと意外に頑固だ。
「私は絶対に着いて行かないよ」
ユミとは幼馴染でそのことを十分に分かっているユウキは、半ば呆れ顔でユミを見ている。
「私も絶対無理!」
アイコは本気の恐怖を顔に浮かべて、首を横に振っている。
「リカちゃんは?」
「私もちょっと……」
「何だよ、もう!みんな、だらしないなあ!」
ユミはプンプンと怒りながら、礼拝堂に向かって歩き出す。
つられるようにして、私たちも扉の前まで移動した。
立ち入り禁止とはなっていたものの、入口には鍵などはかかっておらず、古いロープが扉のノブに巻きつけてあるだけだ。
ユミはそれを外すと、
「じゃ、いってきまーす♪」
まるで恋人にでも会いに行くように、嬉しそうな顔で礼拝堂の中へ消えて行った。
もし一人だったら、大きな銀杏の木に月明かりまで遮られて真っ暗になってしまうあの道を、選んで歩いたりはしなかったと思う。
でも、あの時はいつものメンバーでいた訳だし、怖いなどとは微塵も思わなかった。
例によってユミとユウキが馬鹿なことをいい、アイコがそれに突っ込んでいる横で、ふとあの礼拝堂に視線を向けた私は、窓からこちらを見ている白い服を着た女性を見ても、不思議にすら感じなかったのだ。
「あれ……?」
「ん、どしたー」
「あそこ……礼拝堂に誰かいるみたい」
「それはないでしょ。立ち入り禁止だよ、あそこ」
ユミは私が指さす方向に眼を凝らしながら言う。
「でも、確かに女の人が……」
私がそう言った後で、あれ……もしや……という雰囲気が4人の間に漂った。
「ひょっとして、この世のものじゃないモノですか?」
「もー、そういうの、冗談でもやめてー」
顔を顰めるアイコの隣で、
「ねえ!ちょっと見て来ようよ!」
ユミは瞳を輝かせながらユウキの腕を引っ張っている。
「だから、あそこは立ち入り禁止でしょ!ばれたらヤバいって」
その礼拝堂は、もうずいぶん前に今の新しい礼拝堂が完成して以来、長らく使われていない場所だった。
それでも取り壊しの話が出ないのは、ものすごく古い建物で、歴史的価値があるとかないとか、とにかく手入れだけは時々されながらも、ずっと放置されたままの状態で、もう何年もそこにあるものだったのだ。
当然、中で生徒がたむろしたりしないように、立ち入り禁止となっている。
更に言えば、曰くつきの噂も色々あった。
幼い子供の笑い声が聞こえてくるだとか、死んだ女生徒の霊が出るだとか。
「私、ちょっと行って来るよ」
そんな噂を知ってか知らずか、ユミは腕まくりのポーズをしながら、カバンをユウキに渡している。
「ええ!やめときなよ!」
「そうだよ。もしかしたら痴漢とかかもしんないし。危ないよ」
「いいの!一度でいいから見てみたいんだ、幽霊」
ユミは、言い出すと意外に頑固だ。
「私は絶対に着いて行かないよ」
ユミとは幼馴染でそのことを十分に分かっているユウキは、半ば呆れ顔でユミを見ている。
「私も絶対無理!」
アイコは本気の恐怖を顔に浮かべて、首を横に振っている。
「リカちゃんは?」
「私もちょっと……」
「何だよ、もう!みんな、だらしないなあ!」
ユミはプンプンと怒りながら、礼拝堂に向かって歩き出す。
つられるようにして、私たちも扉の前まで移動した。
立ち入り禁止とはなっていたものの、入口には鍵などはかかっておらず、古いロープが扉のノブに巻きつけてあるだけだ。
ユミはそれを外すと、
「じゃ、いってきまーす♪」
まるで恋人にでも会いに行くように、嬉しそうな顔で礼拝堂の中へ消えて行った。
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