seven wonder!
メイさんちへ行く前に私の家に寄って貰うことになり、店を出発した車は、途中で私のよく知っている道に通りかかった。
S女の敷地に隣接した土地は、山と言うか森のようになっているのだけど、その森の中を通る道だ。
「大丈夫ですか?」
車がその道を走っている最中に、メイさんが油汗をかきだした。
「私、この場所嫌いで」
苦しそうに額を拭っっている。
「前にここで、タヌキを轢いちゃったことがあって」
「ええ!ここ、タヌキがいるんですか!」
私が驚いていると、
「なあ、おまえ免許ねーじゃん。誰の車に乗ってたんだよ」
ノリくんが不機嫌な声で聞いてきた。
「誰だっていーじゃん」
「いつの話だよ」
「忘れたよ、もう一年は前の話だもん」
ふたりは、口げんかを始めてしまった。ノリくんの舌打ちに、車内の空気が一気に悪くなる。
だから家の前で車を降りたときは、やっと解放されたというすがすがしい気分に加えて、ものすごい疲労感が肩の辺りに重石みたいに乗っかっている気分がした。
誰にも気付かれずに家の中へ入るという大仕事を何とかこなしてベッドに倒れ込むと、私はあっという間に、眠りに落ちてしまった。
そこは、霧深い森だった。
少し先を、光がものすごいスピードで左右に走っている。
たぶん、車のヘッドライトだ。
私はそこへ行かなきゃいけない、と思った。
あの光の流れるところに、がんばって行かなきゃいけない。
だけど泥の中を歩いているようで、中々前へと進めない。
早く、早く、早く。
必死に足を動かしていると、私のすぐ横に、誰かがいるのに気がついた。
姉より少し歳が上くらいの、女の人。
その何とも言えない悲しげな表情に、思わず釘づけになった。
「どうしたんですか」
「何か、あったんですか」
話しかけてみても、何も喋ってくれない。
仕方なく、また光の流れる方へ向かって歩き出す。
けれども一向に前へは進めない。
身体がどんどん重くなる。比例するように、心もどんどん重くなる。
女の人は相変わらず、私の横に立って何も言わずに私を見つめている。
こっちはものすごく必死なのにまったく変わらない女の人の様子に、何だかイライラしてしまって、
「何なの!言いたいことがあるなら言ってよ!」
「そうやって、私のこと馬鹿にしてるの!?」
大きな声を出してしまった。
それでも、女の人は口を開こうとしない。
私は、走った。と言っても、まったく前に進まないから、女の人との距離は全然離れない。
思い通りにならないもどかしさで、涙か出そうになったその時、
「────ッ!!」
目が覚めて、ガバっと起き上がった。汗だくになりながらあたりを見回すと、いつもの自分の部屋。いつもの自分のベッドの上。夢の中と同じように、はぁ、はぁ、と息が乱れている。
時計で確認すると、たっぷり眠ったはずなのに、疲労感がものすごかった。
そして………。
「ありえない…………」
呆然とした。
何も言わない女の人の夢。
メイさんの言っていた夢と同じだということに、気付いたからだ。
S女の敷地に隣接した土地は、山と言うか森のようになっているのだけど、その森の中を通る道だ。
「大丈夫ですか?」
車がその道を走っている最中に、メイさんが油汗をかきだした。
「私、この場所嫌いで」
苦しそうに額を拭っっている。
「前にここで、タヌキを轢いちゃったことがあって」
「ええ!ここ、タヌキがいるんですか!」
私が驚いていると、
「なあ、おまえ免許ねーじゃん。誰の車に乗ってたんだよ」
ノリくんが不機嫌な声で聞いてきた。
「誰だっていーじゃん」
「いつの話だよ」
「忘れたよ、もう一年は前の話だもん」
ふたりは、口げんかを始めてしまった。ノリくんの舌打ちに、車内の空気が一気に悪くなる。
だから家の前で車を降りたときは、やっと解放されたというすがすがしい気分に加えて、ものすごい疲労感が肩の辺りに重石みたいに乗っかっている気分がした。
誰にも気付かれずに家の中へ入るという大仕事を何とかこなしてベッドに倒れ込むと、私はあっという間に、眠りに落ちてしまった。
そこは、霧深い森だった。
少し先を、光がものすごいスピードで左右に走っている。
たぶん、車のヘッドライトだ。
私はそこへ行かなきゃいけない、と思った。
あの光の流れるところに、がんばって行かなきゃいけない。
だけど泥の中を歩いているようで、中々前へと進めない。
早く、早く、早く。
必死に足を動かしていると、私のすぐ横に、誰かがいるのに気がついた。
姉より少し歳が上くらいの、女の人。
その何とも言えない悲しげな表情に、思わず釘づけになった。
「どうしたんですか」
「何か、あったんですか」
話しかけてみても、何も喋ってくれない。
仕方なく、また光の流れる方へ向かって歩き出す。
けれども一向に前へは進めない。
身体がどんどん重くなる。比例するように、心もどんどん重くなる。
女の人は相変わらず、私の横に立って何も言わずに私を見つめている。
こっちはものすごく必死なのにまったく変わらない女の人の様子に、何だかイライラしてしまって、
「何なの!言いたいことがあるなら言ってよ!」
「そうやって、私のこと馬鹿にしてるの!?」
大きな声を出してしまった。
それでも、女の人は口を開こうとしない。
私は、走った。と言っても、まったく前に進まないから、女の人との距離は全然離れない。
思い通りにならないもどかしさで、涙か出そうになったその時、
「────ッ!!」
目が覚めて、ガバっと起き上がった。汗だくになりながらあたりを見回すと、いつもの自分の部屋。いつもの自分のベッドの上。夢の中と同じように、はぁ、はぁ、と息が乱れている。
時計で確認すると、たっぷり眠ったはずなのに、疲労感がものすごかった。
そして………。
「ありえない…………」
呆然とした。
何も言わない女の人の夢。
メイさんの言っていた夢と同じだということに、気付いたからだ。
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