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seven wonder!
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連載 Index

 翌日の放課後、例の地下にある部室に先輩を訪ねた。
 御守りを受け取ろうとすると、その前に……と先輩は言葉を濁して、
「ちょっと、つきあってくれる?」
「はい……?」
 疑問顔の私を連れて、外へ出た。そして昨日歩いた道と同じ道筋を再び歩きだす。
「昨日の話なんだけど」
「はい」
「ユミちゃんには、単なる幻覚だろうって言ったけど」
「………はい」
「実はちょっと、違うの」
「………え?」
 私は思わず、足を止めた。
「つ、つまり、どういうことですか!?」
「それを、今から説明してもらおうと思って」
「説明"してもらう"?いったい、誰にですか?」
「それは、私にもわからない」
「………そんな」
 私は、混乱する頭で必死に早足の先輩について行く。
 そして、やってきた。
 古い礼拝堂の、扉の前。
 すっかり慣れた手つきでロープを解き、中へと入った。
 御守りが無くて大丈夫なのかと不安に思いながら、私もおそるおそる足を踏み入れる。
 いや、幻覚の話が嘘なら、御守りなんてもう意味はないのかもしれない。
 でも、昨日先輩と一緒にここへ来た時は何も見なかったし、そもそもそんなに神経質になることはないのかも……。
 私が考えを巡らせていると、
「そこね!いるんでしょ!?」
 礼拝堂の中央にじっと立っていた先輩が突然、大きな声をあげた。
「出てきてよ!」
 礼拝堂の奥へと続く扉に向かって呼びかけている。
 すると────
「えっ……?」
 少しだけ開いていた扉の陰から、ハーフパンツに重ね着風のTシャツという、まあ今時の子らしい格好の男の子が、すっと現れた。
(こんなところに、なんで?)
 6、7歳くらいだろうか。ちょっと怒ったような顔をして、こちらに向かって歩いてくる。……が、すべきはずの靴音が、何故かしない。しかも、
(あれ、なんか……身体が……透けてる……?)
 鳥肌が、ぞわっと立つ。
「安心して」
 先輩は、私に向かって言った。
「いたずらはするけど守護霊の部類に入る、まあ、座敷童子みたいなもんよ」
「ざしきわらし……」
 そんなこと言われても、安心なんて出来る訳がない。身体を緊張させながら、私はその男の子をじっと観察した。………やっぱり、透けている。礼拝堂備え付けの長椅子が、男の子の身体の向こうに見えている。
 それでもまだ、自分の目が信じられずにいる私の前で、
『あんた、変わってる』
 男の子は口を動かして喋って見せた。不思議な声だ。周囲の空気と、心の中に、わんわんと響く声だ。
『シスターや神父様によく似てるのに、全然違う。……何者?』
「私が変わってるから、昨日は警戒していつものいたずらをやらなかったのね」
『………いたずら?』
「人の頭ん中覗いて、その子が怖いと思うものをイメージ化して見せてるんでしょう」
『いたずらじゃない』
 男の子は心外だという顔になる。
『ここを護ってるんだ。悪い奴がやって来ないように』
「悪い奴?」
『そう』
 男の子は頷いて、
『僕を殺した奴みたいな』
 そう言った。
 私の心臓は、どきりと音を立てた。
「………そう」
 先輩が、男の子目線に合わせてしゃがみ込む。
「誰も来なくて、寂しくはないの?」
『べつに』
 男の子は先輩から目を逸らす。
『ここにいればきっといつか天使が迎えに来て、神様のところへ連れて行ってくれるんだ』
「…………」
 私は、何だか切ない気持ちになった。
 こんなところにひとりで、ずっと待っていなくちゃいけないなんて。
 すると先輩が、妙なことを言いだした。
「ねえ、私ね、あなたが神様のところへいくお手伝いが出来るの」
 男の子も、疑問顔になる。が、
「もしあなたさえよければ───
『あんた、天使なの!?』
 今までで一番大きい声を出した。
 しかし先輩は、ゆっくりと首を横に振る。
「残念だけど」
『……あっそ』
 男の子はがっかりした顔になった。
『……なら、いい』
 そして、横を向いてしまう。
「そう?じゃあ、また遊びに来てもいいかな」
 男の子は答えなかったけど、その横顔は先輩の言葉を受け入れている風だった。
「私も、来てもいい?」
 私が横から尋ねると、今度はこっくりとうなずいてくれた。
「よかった。それじゃあもう、怖いイメージは見せないでくれるのね」
 私が安心した声を出すと、男の子は何のことかわからないといった顔をする。
 その顔を見て、先輩も疑問の顔になった。
「この子にも、見せたでしょう?白いドレスの女の人のイメージ」
『さあ。僕はそんなことしてない』
「………え?」
 そこで今までずっと怒ったような顔をしていた男の子が、
『見たんだ』
 初めて、笑った。
 不気味に、にやりと。
 そして、言った。
『それは、ホンモノだよ』





 =私立S女学院・七不思議 その1=

古い礼拝堂には、白いドレスを着た幽霊がでる。
何でも、礼拝堂の裏にある楕円形の白い石は、彼女の墓石のなれの果てだという………。
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