seven wonder!
クラブ棟に地下があるのは知っていたけど、物置になっているような部屋ばかりで、まさかそこを部室として使っている人たちがいるだなんて、知らなかった。
ちょっと薄暗い廊下を恐々進んでいくと、一番奥にその部室は見つかった。"全国郷土史・民俗学研究同好会"というかわいい手書きの文字の看板が掲げられている。
私はその扉をそっとノックした。
───返事はない。
「失礼します……」
声をかけて、扉をあける。
すると────。
部屋は半地下のようになっているらしく、高い天井のすぐ下の壁に、明かり取りの天窓がついていた。
そこから光が差し込んで、まるでスポットライトのように、部屋の中央にひとつだけ置かれた机にあたっている。
そしてその机には、制服を着たおさげ髪の女生徒が神々しく─────いびきをかきながら、突っ伏していた。
「あの……」
「─────んぁッ!!!」
私の声に驚いてガバッと顔をあげたその女生徒の口元には、涎の跡がくっきりとついている。
それでも、
(きれい)
とっても、美人だった。こんな人、学校にいただろうか?
利発そうな、はっきりとした顔立ち。たぶん、男子よりも女子からの人気がありそうなタイプ。
うちの学校では、絶対に有名になりそうな人なのに。
「あの、門脇先輩っていらっしゃいますか」
私がそういうと、その女生徒は口元を袖でごしごしと擦りながら、
「残念だけど、当同好会は門脇綾子ただひとりなのよ」
ため息とともに言った。
「じゃあ、あなたが……」
「そ。私がその門脇先輩。……まさか、入会希望者じゃあないわよねえ」
「いえ……あの、実は相談があって……」
"相談"という言葉を聞いたとたん、彼女はウッと顔を歪めた。
「相談って、どんな?」
「その………」
もしかしたら信じて貰えないかもしれない、と思って口籠っていると、
「霊でも見ちゃった?」
彼女のほうから、話題を振ってくれた。
「そう、そうなんです!実は一週間前、古いほうの礼拝堂で女の人を見てしまって!」
「やっぱり」
彼女はおさげの頭をぽりぽりと指で掻く。
「悪いけど、そういう相談は断ることにしてるのよ。だって、キリがないんだもん」
「あの、でも、友達がその幽霊を見たせいで寝込んでしまっていて」
「そうなの……?」
「もう一週間も学校を休んでいて」
しかもそれは、私が変なことを言い出してしまったせいだったりするものだから、困り果てていてほんと、藁にも縋る想いなのだということを、必死に顔でアピールしていると、
「いいわ」
彼女は決して恩着せがましくない、さばさばとした口調で言った。
「聞くわよ。こっち来て座って」
入口の所に立ったままだった私は、その言葉に心底ホッとしながら、
「失礼します」
白い机をひとつ挟んで、彼女の正面へと腰掛けた。
ちょっと薄暗い廊下を恐々進んでいくと、一番奥にその部室は見つかった。"全国郷土史・民俗学研究同好会"というかわいい手書きの文字の看板が掲げられている。
私はその扉をそっとノックした。
───返事はない。
「失礼します……」
声をかけて、扉をあける。
すると────。
部屋は半地下のようになっているらしく、高い天井のすぐ下の壁に、明かり取りの天窓がついていた。
そこから光が差し込んで、まるでスポットライトのように、部屋の中央にひとつだけ置かれた机にあたっている。
そしてその机には、制服を着たおさげ髪の女生徒が神々しく─────いびきをかきながら、突っ伏していた。
「あの……」
「─────んぁッ!!!」
私の声に驚いてガバッと顔をあげたその女生徒の口元には、涎の跡がくっきりとついている。
それでも、
(きれい)
とっても、美人だった。こんな人、学校にいただろうか?
利発そうな、はっきりとした顔立ち。たぶん、男子よりも女子からの人気がありそうなタイプ。
うちの学校では、絶対に有名になりそうな人なのに。
「あの、門脇先輩っていらっしゃいますか」
私がそういうと、その女生徒は口元を袖でごしごしと擦りながら、
「残念だけど、当同好会は門脇綾子ただひとりなのよ」
ため息とともに言った。
「じゃあ、あなたが……」
「そ。私がその門脇先輩。……まさか、入会希望者じゃあないわよねえ」
「いえ……あの、実は相談があって……」
"相談"という言葉を聞いたとたん、彼女はウッと顔を歪めた。
「相談って、どんな?」
「その………」
もしかしたら信じて貰えないかもしれない、と思って口籠っていると、
「霊でも見ちゃった?」
彼女のほうから、話題を振ってくれた。
「そう、そうなんです!実は一週間前、古いほうの礼拝堂で女の人を見てしまって!」
「やっぱり」
彼女はおさげの頭をぽりぽりと指で掻く。
「悪いけど、そういう相談は断ることにしてるのよ。だって、キリがないんだもん」
「あの、でも、友達がその幽霊を見たせいで寝込んでしまっていて」
「そうなの……?」
「もう一週間も学校を休んでいて」
しかもそれは、私が変なことを言い出してしまったせいだったりするものだから、困り果てていてほんと、藁にも縋る想いなのだということを、必死に顔でアピールしていると、
「いいわ」
彼女は決して恩着せがましくない、さばさばとした口調で言った。
「聞くわよ。こっち来て座って」
入口の所に立ったままだった私は、その言葉に心底ホッとしながら、
「失礼します」
白い机をひとつ挟んで、彼女の正面へと腰掛けた。
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